女性にとって大敵の貧血!たんぱく質補給で予防ができるって本当?

日常生活の中でめまい、集中力の低下、頭痛、息切れなどの症状はありませんか?そのつらい症状、もしかしたら貧血が原因かもしれません。貧血にはいくつか種類がありますが、特に女性はさまざまな影響で 鉄欠乏性貧血になりやすい傾向にあります。[1]
そこで今回は、特に女性が気をつけたい鉄欠乏性貧血について原因と予防方法などを解説していきます。
なぜ女性は鉄欠乏性貧血になりやすいの?

鉄欠乏性貧血とは、赤血球の中のヘモグロビンの材料である鉄が不足して、酸素の供給が十分にできない状態となり、貧血症状になることを言います。
なぜ女性が鉄欠乏性貧血になりやすいかというと、月経時の出血による鉄の損失、過度なダイエットや偏食による栄養バランスの悪化による鉄欠乏、妊娠や授乳などによる鉄の需要増大などが原因だと考えられています。さらに、子宮筋腫や子宮内膜症などの女性特有の疾患も鉄欠乏の原因となります。 女性はこのようにさまざまな要因で鉄欠乏性貧血になりやすいのでしっかり予防をすることが大切です[2]
積極的に摂りたい!鉄の1日の摂取推奨量

鉄の推奨量(mg/日)
鉄欠乏性貧血を予防するためには、食事から十分な鉄を摂取することが大切です。18~49歳の日本人の成人女性が1日にとりたい鉄の推奨量は、表のように月経のあり、なしや妊娠の有無で異なります。[3]
鉄には”ヘム鉄”と”非ヘム鉄”の2つのタイプがありますが、効率よくとりいれるためには、これらの特徴の違いを理解しておくと良いでしょう。ヘム鉄は、牛肉やレバー、まぐろやカツオなど動物性食品に豊富に含まれており、比較的吸収率が高い特徴があります。それに比べて大豆製品、野菜、ひじきなど植物性の食品に含まれる非ヘム鉄は吸収率が低い傾向があると言われています。ですが、非ヘム鉄も食べ方次第で吸収率を高められることが明らかにされています。
非ヘム鉄は、肉や魚に含まれるヘム鉄と一緒に摂取したり、ほうれん草、にんじん、かぼちゃなどの緑黄色野菜や果物などに含まれているビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が高くなるため、動物性食品と植物性食品を上手に組み合わせて取り入れることが大切です。[4]
鉄のほかに貧血対策に重要な栄養素
鉄以外にも不足すると鉄欠乏性貧血になりやすい栄養素があることをご存知でしょうか? 意外と知られていませんが、鉄を体内で吸収・代謝するためにはさまざまな栄養素の存在が必要不可欠なのです。代表的なものに、たんぱく質、ビタミンC、葉酸、ビタミンB16があります。今回は、その中でも鉄と同様にヘモグロビンの材料となるたんぱく質について詳しくみていきましょう。
たんぱく質不足が貧血の原因になる!?

たんぱく質が貧血に関連しているイメージはあまりないかもしれませんが、不足してしまうとヘモグロビンが正常に作られなくなってしまう可能性があるのです。[4]
最も鉄欠乏性貧血に注意が必要な18歳~49歳の女性は、1日にたんぱく質を摂取エネルギーの13~20%、約50gを目安にとることが推奨されています。令和元年の国民健康栄養調査の結果によると、調査対象者全体の平均値は推奨量を超えており、10~40代の女性もたんぱく質が不足している傾向はないようです。しかし、これはあくまでも平均値ということを忘れてはいけません。近年若い女性を中心に痩せ型思考の方が増えており、ダイエットを目的とした極度の食事制限が原因で栄養不足を招き、鉄やたんぱく質などが欠乏した結果、貧血になってしまうケースも生じているので注意が必要です。[3,5]
たんぱく質不足を防ぐには?
たんぱく質不足を防ぐために、意識してとりたい食材は、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品です。
その中でもたんぱく質の栄養価を示す値のアミノ酸スコアが100に近い良質なたんぱく質を摂取することが大切です。鶏卵、牛肉、豚肉、鶏肉、大豆などは、アミノ酸スコアが高い代表的な食材なので積極的に取り入れましょう。[6]最近、良質なたんぱく質を摂取するためにプロテインを飲んでいる方が増えているようです。プロテインにも様々な質のものがあるため、選び方をおさえておきましょう。
プロテインを選ぶ時のポイントは?
今回は、ホエイプロテインとソイプロテイン2種類のプロテインについて解説します。
ホエイプロテインとは、牛乳由来の水溶性たんぱく質です。アミノ酸スコアが高く、吸収が早いので、運動や筋トレをした後などすぐにたんぱく質補給をしたい時におすすめです。
一方、大豆が原料のソイプロテインは、植物性のたんぱく質でありながらもアミノ酸スコアは動物性のたんぱく質に負けていません。吸収速度はホエイプロテインと比較すると緩やかですが、低カロリーで腹持ちが良いため、摂取カロリーを抑えてたんぱく質補給をしたい女性におすすめです。食事だけでたんぱく質を補給することが難しい場合は、日々の食事にプロテインを取り入れてみるのも良いでしょう。[7,8]
まとめ
女性は特に気をつけたい鉄欠乏性貧血ですが、実は鉄以外にも目を向けるべき栄養素があることをご理解いただけましたでしょうか?つらい症状が出る前に定期的な健康診断や食事改善などをして予防に努めるようにしましょう。
【参考文献】
[1]厚生労働省, e-ヘルスネット/鉄
[2]岡田 定, 鉄欠乏性貧血の治療指針, 日本内科学会雑誌,第99巻,第6号文部科学省, 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[3]厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2020年版)
[4]厚生労働省, e-ヘルスネット/貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう
[5]厚生労働省, 国民健康・栄養調査(令和元年)
[6]文部科学省. 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[7]USDA, FoodData Central
[8]JE Tang, et al. Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men, J Appl Physiol. 2009 Sep;107(3):987-92.
プロフィール

調剤薬局の管理栄養士として栄養指導業務を経験後、フリーランス管理栄養士として独立。糖尿病や高血圧などで厳しい食事制限がある方を対象に「どんな状況でも食事を楽しめるような栄養指導」をコンセプトに個別の食事サポートしている。また、管理栄養士にとって就職後スキルアップする場が少ないことを痛感し、自信を持って栄養指導をするための専門家向け通信講座を開講中。