腸内環境を良くしてシェイプアップ!女性に嬉しい栄養素「食物繊維」について管理栄養士が解説
普段の食事で食物繊維を意識してとっていますか?日本人の多くが不足している現状がある食物繊維ですが、実は私たちの健康に様々な面で貢献している積極的にとりたい栄養素の1つです。そこで今回は、食物繊維が持つ働きと特に女性に対して嬉しいポイントを詳しく解説します。
食物繊維ってどんな栄養素?
食物繊維とは、小腸で消化・吸収されずに大腸まで達する食品成分のことです。近年、よく知られている整腸作用以外にも、生活習慣病予防につながる働きがあることが明らかにされています。
食物繊維には、大きく分けて水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、それぞれ働きが異なります。水溶性食物繊維は、水に溶けるとジェル状に変化する性質があり、小腸や大腸内に張り付いて糖質やコレステロールの吸収をおだやかにします。その他にも、便を柔らかくする働きや、腸内の善玉菌を増やして腸内環境の改善に役立つことが明らかにされている今注目の栄養素です。
一方、不溶性食物繊維は水に溶けずに水分を吸収し、便のかさを増やす働きがあります。その働きによって排便が促され、腸内の毒素等の有害物質を吸収して便と一緒に体の外へ排泄する手助けをしてくれるのです。
ただし、特定の機能性を求めてどちらか一方の食物繊維ばかりを摂ることは避け、様々な食品を組み合わせて2種類の食物繊維をバランス良く摂るようにしましょう。[1]
食物繊維が持つ、特に女性に嬉しい働きとは?
様々な働きを持つ食物繊維ですが、特に女性に嬉しい働きとして注目したいのは、女性特有の疾患である乳がんの予防や、多くの女性が悩まされている便秘の改善・予防などです。
乳がんの発症には、女性ホルモンのエストロゲンが大きく関わっていることが明らかにされています。これまでの研究で、エストロゲンの代謝に食物繊維が関わっている可能性が示唆されており、食物繊維の摂取量が多い人の方が閉経前後の乳がん発症リスクが低いことが明らかにされています。[2]
また、便秘を甘くみて放っておくと、腸の働きが悪くなり、代謝が落ちて太りやすくなる恐れがあります。大腸通過時間が正常にも関わらず排便量や排便回数が少ない便秘症では食物繊維摂取不足が原因であることが多く、食物繊維をしっかり摂ることで改善する場合があります。便通をよくして体内の老廃物の排泄を促すことは、シェイプアップにも必要不可欠です。[3]
さらに、食物繊維が豊富な食品は低カロリーな傾向があるだけでなく、少量でも食べた時に満足感・満腹感を感じやすい特徴があり、美味しく食べてキレイに痩せる手助けをしてくれます。加えて、水溶性食物繊維の中には、食事の糖や脂肪の吸収をやわらげる働きがあるものもあるため、食物繊維はダイエットの強い味方と言えるでしょう。
食物繊維が不足するとどうなるの?
食物繊維が不足すると、腸内環境の悪化によって便秘になりやすくなることが明らかにされています。食物繊維の摂取量が極端に少ない場合、大腸がんのリスクが高まる可能性があり、さまざまな体の不調が出てきてしまうことが考えられます。[4]
1日どのくらいとればいいの?
厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の1日あたりの目標量は18~64歳で男性21g以上、女性18g以上とされています。[6]
欧米での研究では、1日24g以上の食物繊維をとると2型糖尿病や乳がん、胃がん、大腸がんなどの発症リスクが下がると報告されており、日本でも本来は24g以上を目標量として設定することが検討されました。しかし、日本人の食物繊維摂取量は近年減少傾向にあり、令和元年国民健康・栄養調査の結果によると、20~49歳の1人1日当たりの食物繊維摂取量は17.5~18.3gでした。[1,5] よって、現代の日本人の食生活では24g以上をいきなり目指すのは、ハードルが高いと考えられたため、今の値が中間目標として定められたのです。
しかし、この1日当たりの目標量に対して、成人女性は平均的に3~4g不足していると言われているため、まずは毎日の食生活に食物繊維を3~4gプラスすることを意識してみましょう。
不足しやすい食物繊維をしっかり摂るためにはどうしたらいいの?
次に、普段の食事で食物繊維を効率よくとり入れるコツをご紹介します。
食物繊維は、穀類、野菜類、果物類、種実類、海藻類、豆類、きのこ類などの植物性食品に豊富に含まれます。食品別に見るとそば、ライ麦パン、しらたき、さつまいも、切り干し大根、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、糸引き納豆、いんげん豆、あずき、おから、しいたけ、ひじきなどは、1食あたりの摂取量で食物繊維が2〜3gも含まれています。これらの食品を上手に活用して、まずは1日あたりの食物繊維摂取量を増やせるように意識していきましょう。
特に、普段の食事に取り入れたいおすすめの食品の1食当たりの目安量と食物繊維含有量を表にまとめてみました。
【1食当たりの食物繊維含有量】
様々な働きを持つ食物繊維ですが、特に女性に嬉しい働きとして注目したいのは、女性特有の疾患である乳がんの予防や、多くの女性が悩まされている便秘の改善・予防などです。
実は、食物繊維は調理の工夫でも摂取量を増やすことができるのです。食物繊維を豊富に含む野菜類などは生のままだとかさが多く、たくさんとることができないため、加熱してかさを減らすことで効率良く摂取できます。
また、主食の穀類を玄米ごはん、麦ごはん、胚芽米ごはん、全粒小麦パンなどにすると効率よく食物繊維の摂取量を増やすことができます。他にも栄養素が凝縮している切り干し大根、干しシイタケ、きな粉などの乾物にも食物繊維が豊富に含まれているので日々の食事に乾物を使ったお料理を取り入れることもおすすめです。[7]
まとめ
食物繊維の嬉しい働きについてお分かりいただけましたでしょうか。
不足傾向にある食物繊維ですが、工夫次第で摂取量を増やすことができます。シェイプアップや健康のために、ぜひこの機会に食物繊維に目を向けてください。
【参考文献】
[1]厚生労働省:e-ヘルスネット|食物繊維の必要性と健康
プロフィール
調剤薬局の管理栄養士として栄養指導業務を経験後、フリーランス管理栄養士として独立。糖尿病や高血圧などで厳しい食事制限がある方を対象に「どんな状況でも食事を楽しめるような栄養指導」をコンセプトに個別の食事サポートしている。また、管理栄養士にとって就職後スキルアップする場が少ないことを痛感し、自信を持って栄養指導をするための専門家向け通信講座を開講中。