かゆいアトピーをなんとかしたい!食事からアプローチできる?できない?
ご自身やご家族に、アトピーに悩まされている方はいらっしゃいますか?
毎日の食事で、かゆみをやわらげることができたら嬉しいですよね。
ここでは「食事でアトピーの症状を抑えることができるのか?」という問いについて解説します。
アトピー性皮膚炎の基本治療は3つ
アトピー性皮膚炎とは、症状がひどくなったり軽くなったりを繰り返す、かゆみを伴う湿疹のことです。
一般的に幼い頃に発症し,成長とともに治りますが、一部が成人型アトピーに移行すると考えられています。
環境や遺伝的な原因があわさって発症するため、疾患そのものを完治させる治療法はありません。
治療の基本は、「薬物療法・スキンケア・かゆみの原因を取り除くこと」とされています[1]。
アトピーのかゆみが食事でやわらぐ?2つの栄養学的トピックス
アトピーの症状改善と食事については、さまざまな研究が行われており、結果にバラつきはあるものの、アトピーとの関連がみられたという報告もあります。
アトピー性皮膚炎との関係が噂される2つの栄養学的トピックスについて解説します。
その1:腸内環境を整えるとかゆみがやわらぐ
アトピーは免疫反応の異常によって起こります。
腸内細菌は免疫反応に大きく関わっており、アトピーとの関連を示す研究も多く行われています[1]。
アトピーの子どもと、そうでない子どもの腸内細菌を比較した研究では、アトピーが重症な子どもほどビフィズス菌が少ないことが報告されています。
だからといって、ビフィズス菌が少ないとアトピーになるというわけではありません[2]。
腸内環境について、症状改善に効果があったとされる、プロバイオティクスとプレバイオティクスについて紹介します。
■生きて大腸まで届くプロバイオティクス
プロバイオティクスとは、ヨーグルトや納豆などの、生きた善玉菌のことです。
直接食べることで、腸内の善玉菌を増やすことができます[3]。
様々な研究を調査した結果、単一株のプロバイオティクスを摂取することは、アトピーの症状改善に有効であると結論づけられています[4]。
■善玉菌のエサとなる!プレバイオティクス
プレバイオティクスとは、オリゴ糖や食物繊維のことです。
これらをエサとして腸内に届けることで、元々存在する善玉菌を増やせます。
オリゴ糖は、大豆・玉ねぎ・ごぼう・ネギ・ニンニク・アスパラガス・バナナなどに含まれています[2]。
5歳以下のアトピーの子どもをランダムに選び、12週間オリゴ糖を摂取したグループと、何もしなかったグループを比較した結果、オリゴ糖を摂取したグループでは、糞便中の善玉菌が10倍となり、アトピーの重症指数が改善したという報告もあります[5]。
「私の完全美容食」にも、プレバイオティクスが含まれおり、食事に野菜が不足した際などに、腸内環境を整える手段として活用できます。
その2:脂肪酸バランスを整えるとかゆみがやわらぐ
脂肪酸とは、脂肪を構成する成分のことです[6]。
その中でも、n-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3)摂取の減少とn-6系多価不飽和脂肪酸(オメガ6)摂取の増加が、近年の世界的なアトピー患者の増加に関係していると考えられています。
オメガ3とオメガ6は、体内で作ることができない必須脂肪酸なので、食品から摂る必要があります。
オメガ3は、 腸内環境と免疫を調整できるといわれており、不足すると皮膚炎を発症します。
18〜40歳のアトピー患者をランダムに選び、オメガ3を含むサプリメントを8週間毎日摂取したグループと、飽和脂肪酸を摂取したグループを比べた研究があります。
その結果、オメガ3を含むサプリメントを摂取したグループでは、血液中の脂肪酸バランスが整い、アトピーの重症度指数が改善しました[7,8,9]。
オメガ6・・・サラダ油やごま油に含まれるリノール酸や、卵や肉に含まれるアラキドン酸など
オメガ3・・・アマニ油に含まれるα-リノレン酸や、魚に含まれるEPAやDHAなど[10]
■どれくらいのバランスで摂取したらいい?
脂肪酸をどれくらいのバランスで摂取すると、アトピーの症状が改善するかについては、まだ研究途中です。
厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、30〜49歳の女性が1日に必要なオメガ6は8g、オメガ3は1.6gで、5:1のバランスに設定されています。
これは日本人の多くが、現在摂取している量に基づいて定められているため、あくまでも目安の数値です[9]。
どんなに良いと言われても、とりすぎは禁物
かゆみがやわらぐといわれると、たくさん食べたくなる気持ちもわかりますが、過ぎたるは猶及ばざるが如し。
特定の食品ばかりを食べたりせず、様々な食品を満遍なく食べることが大切です。
医師と相談しながら適切に薬を使用し、スキンケアを心がけ、かゆみの原因を見つけて取り除いた上で、食事を整えましょう。
【参考文献】
(すべて2024年3月26日閲覧)
[1]公益社団法人日本皮膚科学会, アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021年版
プロフィール
美腸栄養学を軸に、毎日の食事で体の内側から肌トラブルを予防・改善に導く料理教室ricca.kitchen を主宰。フリーランスの管理栄養士として、コラム執筆・監修、レシピ開発を行う。
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