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夜9時のチキンで、朝8時のぶんまで足りる?

タンパク質は、一日分をまとめるより、食事ごとに

朝8時。コーヒーを飲んで、そのまま仕事へ。
昼1時。会議の合間に、パスタかおにぎり。
夜9時。ようやく落ち着いて、鶏肉や魚をしっかり食べる。

忙しく働いていると、こんな日は珍しくありません。夕食を終えたころには、「今日はタンパク質もとれた」と少し安心する。栄養管理アプリを開けば、一日の合計量は足りているかもしれません。

でも、朝と昼にタンパク質がほとんどなかった時間まで、夜の一皿で埋め合わせられるのでしょうか。

前回は、タンパク質を「何からとるか」を見ました。今回は、「いつとるか」です。ポイントは、一日の合計量に加えて、タンパク質をとる機会を一日の中にいくつつくるかです。

筋肉が反応するのは、タンパク質をとったあと

筋肉のタンパク質は、古いものが分解される一方で、新しいものがつくられています。この入れ替えは、眠っている間も、仕事をしている間も続いています。

食事でタンパク質をとると、消化されてアミノ酸になり、血液中に増えていきます。それをきっかけに、筋肉では新しいタンパク質をつくる「筋タンパク質合成」が高まります。

ただし、この反応は一度の食事で一日中続くわけではありません。食後に高まり、数時間たつと、次第に落ち着いていきます [1]。

タンパク質をとるたびに、筋タンパク質合成の波が一時的に立ち上がる。そう考えると、夜にまとめて食べるだけでは足りない理由が見えてきます。

夕食で多くのタンパク質をとれば、夕食後の反応は高まります。けれど、朝食後や昼食後に起こらなかった反応まで、夜になってさかのぼって起こすことはできません。

山ができるのは食べた直後だけ

同じ90グラムでも、反応は取り方で違う

健康な成人を対象に、一日に約90グラムのタンパク質を食べてもらった小規模な研究
があります [2]。

一方は、朝・昼・夕に約30グラムずつ。もう一方は、朝が約11グラム、昼が16グラム、夕食が約63グラムです。一日の合計量も、食事全体のエネルギーも同じでした。違ったのは、タンパク質を食べるタイミングです。

三食にほぼ均等に分けた場合は、朝食後、昼食後、夕食後に、それぞれ筋タンパク質合成が高まります。一方、夕食に偏った場合は、朝と昼の反応が小さく、夕食後に大きく集中します。

その結果、24時間の筋タンパク質合成は、三食にほぼ均等に分けたときのほうが高くなりました。

栄養管理アプリの合計欄に並ぶ数字は同じでも、体の中で起きる反応まで同じとは限りません。筋肉にとっては、「一日に何グラム食べたか」だけでなく、「いつ食べたか」も大切なのです。

合計は同じでも山の面積が違う

見るべきなのは、一日の中の「タンパク質の空白」

夕食でタンパク質をしっかり食べること自体は、悪いことではありません。見直したいのは、その前に長い空白ができていることです。

朝食にはほとんどない。昼食も主食が中心。昼から夕食まで何時間も何もとらない。こうした日は、夜に一日の合計量を満たしても、筋タンパク質合成が高まる機会は夕方以降に偏ります。

まずは、一日に必要なタンパク質の合計量を確保する。そのうえで、朝・昼・夕、そしてその間のどこにタンパク質があるかを見る。これが、この記事で伝えたいとり方です。

朝食や昼食、午後の補食など、タンパク質が不足している時間帯に補給を一回足すだけでも、筋肉が反応する機会を増やせます。見るべきなのは、夕食の量ではありません。

その前に、何時間の空白があるかです。

「こまめに」は、少量をずっと飲むことではありません

では、少しずつ何度も飲めば、飲むほどよいのでしょうか。

運動後の12時間に、合計80グラムのホエイタンパク質をとった研究では、40グラムを6時間おきに2回、20グラムを3時間おきに4回、10グラムを1時間半おきに8回
という三つの方法が比べられました [3]。

筋タンパク質合成が最も高かったのは、20グラムを3時間おきに4回とった場合でした。まとめすぎても、少量を細かく刻みすぎても、その中間には及びませんでした。「こまめに」とは、少量のプロテインを一日中だらだら飲み続けることではありません。筋肉が反応できる量を一回分としてとり、ある程度の間隔を空けて、次の補給機会をつくることです。

これは運動後にホエイタンパク質をとった研究で、すべての人が 3 時間おきに 20 グラムを飲むべきだ、という意味ではありません。日常では、三食を基本に、長い空白へ補食を加えると考えます。

刻みすぎても空けすぎても面積は増えない

食事で埋めにくい空白に、プロテインを使う

三食すべてで、十分なタンパク質を食事からとれれば、それが基本です。けれど、忙しい日に毎回、肉や魚、卵、大豆食品を準備するのは簡単ではありません。

そんなとき、プロテインは食事の代わりではなく、食事だけでは埋めにくい空白を補う手段になります。調理をしなくても取り入れやすく、一回にとるタンパク質の量も把握しやすいからです。

朝食のタンパク質が少ないなら、朝に加える。昼食が麺やおにぎりだけになったなら、昼食と組み合わせる。昼から夕食までの間が長いなら、午後の補食にする。運動をした日は、運動後に使う。

最初から何度も飲む必要はありません。まずはタンパク質が抜けている時間を一つ見つけ、そこに一回の補給を足すところからで十分です。

合計量を満たし、空白をつくらない

タンパク質は、一日に必要な合計量を満たすことが土台です。そのうえで、夜の一食に偏らせず、朝・昼・夕、必要に応じてその間にも分けてとる。

食事で足せるなら食事で。準備が難しいときや、次の食事まで長く空くときはプロテインで補う。

夜の一皿に、一日分の責任を背負わせない。

筋肉が反応する波を、一日の中にいくつかつくる。それが、タンパク質を「こまめに補給する」ということです。

【参考文献】
[1]Atherton PJ, Etheridge T, Watt PW, et al. Muscle full effect after oral protein: time-dependent concordance and discordance between human muscle protein synthesis and mTORC1 signaling. American Journal of Clinical Nutrition. 2010;92(5):1080-1088.

[2]Mamerow MM, Mettler JA, English KL, et al. Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults. Journal of Nutrition. 2014;144(6):876-880.

[3]Areta JL, Burke LM, Ross ML, et al. Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. Journal of Physiology. 2013;591(9):2319-2331.

プロフィール

佐藤 洋平
医学博士 佐藤洋平
筑波大学にて国際政治学を学んだのち、飲食業勤務を経て、理学療法士として臨床・教育業務に携わる。人間と脳への興味が高じ、富山大学大学院でコミュニケーションに関わる脳活動の研究を行う。2012年より脳科学に関するリサーチ・コンサルティング業務を行うオフィスワンダリングマインド代表として活動。研究者からプライム上場企業を対象に学術支援業務を行う。研究知のシェアリングサービスA-Co-Laboにてパートナー研究者としても活動中。日本最大級のサイエンスブログ、Labo Brainsでは「シュガー先生の脳科学コラム」を執筆、脳科学に関する情報を広く提供している。